団体概要

……支援ネットこれまでの歩み 代表/竹村朋子より……

■□2003年-2009年□■ ~支援ネット立ち上げまで ~

支援ネットを立ち上げる前、私は熊本市内にある熊本YMCAという日本語学校で主任日本語講師を務めていました。そこには「日本に来て1年になるのに、子どもが日本語がわからなくて困っている。誰か日本語を教えてくれる人がいないか。」という問い合わせが、県内各地の保護者、学校担当者、教育委員会からたびたびありました。
 実はその当時、児童生徒のための日本語指導が行われていたのは熊本市と菊陽町のみで、他の市町村には全く支援の環境がありませんでした。また、YMCAのように熊本市内には複数日本語学校がありましたが、いずれも受け入れの条件が18歳以上でした。
 しかし、日本語がわからず困っている子どもたちを目の前にして、門前払いのようなことはできず、私の自宅近隣の市町村の子どもは毎週末、遠方の子どもは夏休みなどに1か月半、我が家にホームステイをさせ、日本語を教えるという方法をとりました。現在までに我が家にホームステイした子供の数はこの10年間で10数人になります。日本語の初期指導を一定期間しっかりと行うことにより、学校の授業も理解できるようになり、指導した子のほとんどは大学に進学することができました。
一方、たまたま支援環境がある市町村に編入した子どもや、たまたま私に出会った子どもだけが日本語指導が受けられ、それ以外の子どもたちは指導がないまま、進学や就労に支障をきたすような状況におかれるのはおかしい、編入してきた自治体によってその子の将来が大きく左右されるべきではない、熊本県に編入学してくるすべての児童生徒が日本語指導が受けられるようにしなければならないと強く思うようになりました。

■□2009年5月□■ ~「外国から来た子ども支援ネット」の立ち上げ~

 当時の環境を強く憂いながらも、1人でできることは限られていると思い、外国から来た子どもたちのための会をつくることを、当時「進路ガイダンス※1」の開催を一緒に取り組んでいた岩谷さんと山部さんの二人に提案しました。
 岩谷さんは熊本市日本語指導センター校の立ち上げのときから関わり、日本語指導協力者として指導を行いながら、地域で「華友会日本語教室※2」を立ち上げ、10数年にわたり日本語教育の世界で尽力されている方で、山部さんは黒髪小学校で専任指導員として日本語指導に携わり、日本語教師の資格も取得し、その年に退職したばかりで、2人とも子どもの日本語教育に長年かかわってきたベテランでした。

■□2009年5月-2013年9月□■ ~活動開始から現在まで~
 2009年5月「外国から来た子ども支援ネット」を立ち上げました。
 日本語支援関係を「くまもと こどものにほんご」とし、その時すでに数回開催していた「帰国・外国人生徒のための進路ガイダンス」(岩谷代表)、「外国人生徒交流会」(竹村代表)の活動を統合し、①日本語支援 ②進路保障のための活動 ③仲間づくりの3つを活動の柱として動き出しました。
 2009年、2010年には「熊本県多文化共生社会づくり事業」の委託を受けることになりました。

 しかしながら、発足当時は外国から子どもたちが編入してきたという情報が、県内各地から入ってきても、どのようにアプローチをしていいのか皆目わかりませんでした。
 直接、教育委員会へ連絡しても、話を聞いてくれるところは少なく、また、聞いてくれても「予算がない」「ボランティアに依頼するから必要ない」「生徒の母語がわかる支援員を雇った」など、日本語の初期指導の専門性や重要性を理解してもらえず、講師派遣までに至ることができませんでした。


~無償での日本語指導~

 日本語がわからず困っている生徒がいるのに、自治体に予算がないという理由で何もしないわけにはいきません。そこで、日本語指導の専門性を理解してもらうために、教材の貸し出しやコーディネーターの派遣などを無償で行い、実績を作りました。
 菊池市、八代市、宇城市、山鹿市、大矢野町、長洲町 大津町、山都町に、コーディネーターや指導員として無償で指導を行いました。期間は短いところで半年、長いところでは1年以上。実際に子どもたちが日本語を習得していく様子を現場の先生方に見てもらうのが一番効果的でした。   
 また、ダブルリミテッド※3の子どもたちへの支援の必要性を訴えるために、中学校や保育園へも、そして、高校へ入学した生徒への日本語支援を訴えるために、県立高校2校へも無償で支援に入りました。

 このような活動の結果、来日直後の日本語初期指導だけでなく、ダブルリミテッドの子どもたちへの日本語支援の重要性も多くの自治体が理解し、日本語指導を実施するようになってきました。
 さらに、異文化理解、多文化理解の意識も高まり、外国をルーツとする子どもたちの様々な状況を学ぶ研修会が小中高校を中心に広く開催されるようにもなりました。

~2009年から2016年に 当NPOより日本語指導員を派遣した自治体~

宇城市、菊池市、合志市、菊陽町、益城町、大津町、津奈木町、南阿蘇村、美里町、宇土市、山鹿市、山都町



日本語指導を必要としている子どもが、
熊本県のどこの小中高校に在籍していても、
全員日本語指導が受けられるようになるまで、
今後もさらに活動を続けていきます!!

2013年10月


※1 進路ガイダンス
…外国ルーツの生徒と保護者のための進路ガイダンス。毎年7月に高校受験を控えた中国帰国・外国人生徒と保護者のために開催している。
※2 華友会日本語教室
…中国帰国者2世・3世の青少年のための交流の場として日本語学習、キャンプ、交流会などさまざまな活動を行っていた(1998年から2014年まで活動)。 
※3 ダブルリミテッド
…外国語を母語に持つ親の元、日本に生まれ育ち二言語の環境にいたものの母語と二言語目の両方において年齢に応じたレベルに達していない者。現在教育関係者のあいだで懸案事項となっている。